――気の合う友達って、たくさんいるのに
今は気づかないだけ。
【読み物】夏がきて僕等 ★見渡せばつまらない奴ばかり
夏の始まりを予感させる、そんな汗ばむ夏の夕暮れだった。
ぶらっと街まで買い物に行って、その帰り河口へとつづく土手
を自転車で走っていた。
僕の家は、郊外にある。海岸に近く海水浴上の近く。ど田舎
で、コンビニに売っていないようなものを買いに行くときは、
ちょっと離れた市内まで、バスか自転車で行かなければならな
い。今日の買い物は、特に必要というものではなかった。ただ、
退屈だっただけだ。夕方テレビも見飽きて、外を見るとまだ明
るい。家の中に居るとなんだかもったいないような気がして、
とりあえず自転車にまたがった。それから行き先を決める。
部活をしないようになってから、時間を持て余していた。ど
う使っていいのか分からない。何かしなくてはいけないと、次
第に苛立ちはつのってくる。それをやりすごすと、やるせない
憂鬱だけが残る。
ペダルが回る。憂鬱を手繰り寄せていく。世の中の憂鬱を一
手に引受けて走る。海まで続く土手を走っていく。近所の人が
川原でゴミを燃やしている。その光だけが、あいまいな黄昏の
時間の中で、くっきりと輝いている。まるで道標みたいに。最
近なんだか、人と口をきくのがかったるい。ほっておいて欲し
いと思う。マサフミにすら、そう思うことがある。自然と一人
になれる場所を探していて、そこで本を読んだり、ぼけっとし
ていたりする。
ペダルはまわる。かったるいな。何でみんな、あんなにガキ
なんだろう?じれったさに苛々する。もっと気のきいたやつは
いないのかと思う。なんでこんな簡単なことが分からないのだ
ろう?けど、僕だってこんな風に愚痴るだけなんだけど。
ペダルは回る。疲れるからライトは消そう。
ペダルは回る。家々の団欒からもれる明りが、砂漠に咲くオ
アシスの花みたいに、ほのかな暗闇の中に、点在している。遥
か彼方には、灯台の緑のともし火が、蜃気楼にゆれて見える。
向こうには、開け放されたカーテンの間から、ナイターや、ニ
ュースのテレビと、食卓を囲む家族達の姿が見える。そんな時
間だった。そんな光景は、少しだけ僕を切なくさせた。
いつからだろう、みんなで一緒にご飯を食べなくなったのは
……?いつからだろう。ご飯を食べながら、学校の話をしなく
なったのは……?
ペダルは回る。違和感はいよいよ強くなる。場違いな気持ち
は、日に日に増していった。何かを間違ったような気がする。
何かが違うような気がする。今なら、まだ間にあうような気が
するのだけれど、それがなんだか分からなかった。はっきりと
しない、胸につかえるもやもやが、いつも心のどこかに引っか
かっていて、僕を苛立たせた。
ペダルは回る。川から、蛙の声がいくつも重なって、ステレ
オみたいに耳元で響く。音の洪水を掻き分けて、淡いノスタル
ジーへの憧れと憂鬱を乗せて、自転車は進んでいく、遥かな灯
台のともし火に向かって。浜辺から届く、ひんやりとした風は、
既に夏の気配を含んでいて、夏がすぐそこまで来ていることを
実感させてくれる。
季節の変わり目に、立ちすくんでいた。
チェーンのかかりが悪いらしく、ギアを換えたら、何度かペ
ダルが空回りした。ガチャ、ガチャ。
2004年08月14日
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非常に感動しました。
Excerpt: 《読み物》夏がきてぼくら ★16歳の正しい家族のありかた 【読み物】夏がきて僕等 ★見渡せばつまらない奴ばかり ちょくちょく覗かせてもらっている、 愛するより愛され隊が逝く! さんのスレッドで..
Weblog: きまぐれTの個人的(?)情報発信
Tracked: 2004-08-17 00:24
和やかに談笑する隊員たち

